先日のヤビツライドで発症した膝痛.
当初はリハビリ後に無理し過ぎたが故と思っていたのですが、
そこでポジションが合ってないせいかもとサドルをいじったのが運の尽き.
その後もあまり症状は改善せず遂には尾根幹でも違和感が出るようになってしまい、
さらにステムの高さを変えたりサドルを前後にずらしたりと
気が付けばフィッティングの泥沼にどっぷりと浸かってしまいました.
度々こちらでも書いていますが、僕がロードに接していく上でのテーマは『楽に、楽しく、遠くまで』.
パーツなら安全に関わる面さえきちんとしていれば後は迷っている間もそれはそれで楽しむ事もできますが、 走ってて楽しくない、痛くて乗れないというのは自転車生活の根幹を揺るがす非常事態.
というわけで早々に解決する事にしました、主にお金の力で.
0.どこで受ける?フィッティングサービス
さて、きちんとしたフィッティングを受けようと決めたのですが次の問題はどこで受けるかです.
同種のサービスですとY's Roadの「バイオレーサープレミアム」やSpecializedの「BG-FIT」等が有名ですが、 前者は簡易版の「バイオレーサー1000」のセッティングで痛みが出ている為セカンドオピニオンを求めたいのでパス. 後者はネットでの評判も良く受けてみたかったのですが、場所がコンセプトストア限定というのが最大の難点.
出来ればちょっと違和感が出た際、シューズを新調した際など仕事帰りにふらっと寄れる距離が望ましい. という事で自分の活動圏内で探していたところ、 多摩川サイクリングロード沿いにある「Cycle GATE Tamagawa」さんがBIKEFITを行っており距離的にも良い感じ. 骨格からはじき出した理想値でなく、実際に乗りながら楽なポジションを出すっていう方針も自分に合いそう. というわけで早速電話で予約し診てもらう事にしました.
そんなわけでやって来ましたCycle GATE Tamagawa.
ウォームアップを兼ねて自走で行くつもりが生憎とこの日は朝から春の嵐.
仕方なく急遽トランポで向かったら早めに到着してしまったので、しばらく休憩スペースで時間をつぶす.
北条晶さんのイラストに自転車関連の書籍がお出迎え. コインロッカー、シャワーに休憩スペースも豊富で、ポタリングついでにふらっと来るのもとても良さそうです.
1.先ずは己を知ろう、乗り手の特性チェック
「サイクルゲート多摩川の代表を務める二戸康寛さん -cyclowired」
http://www.cyclowired.jp/image/node/185185, 2016/2/14アクセス
こちらがフィッティングを行って下さる二戸康寛さん.
日本鋪道サイクルレーシングチームにて実業団選手として活動した後
なるしまフレンドにて選手兼スタッフとして勤務、
現在はTOKYO Ventosのセールスチーフと実業団チームの運営を兼任とまさにマルチプレーヤー.
選手として、メカニックとして、そして販売員として其々の視点から意見を貰えるってのは本当に有難いです.
選手時代にはチームの提供マシンがcolnagoだった事があり、 ご自身は選ばなかったもののBititanに乗ってるチームメイトも居たとのお話でなんとも羨ましい. 因みにBititanは泥はねが顔に来るので嫌だったんですよー、 なんてとても気さくな方で機材のセッティング中とか色々雑談して下さるんですがそれがまた面白くてためになります.
さて最初は乗り手側の特性チェック、柔軟性や左右の歪み等を確認してもらいます.
マットの上で仰向けになって脚を上げて柔軟性を見たり、足裏のカント角を測定したりとかなり事細か.
案の定体の固さは指摘されたものの、全体的に大きな歪みはなし.
カント角は足裏に測定器を当てられて「真ん中だと思ったらそう言って下さい」というまさかの自己申告制で、
果たして自分の感性が正しいのか大層不安だったんだけど幸いポジションは出たので一応合ってたのかな.
2.数字で追い込め、下半身のフィッティング
乗り手の測定が終えたらサドルとクリートの調整から入ります.
「マニアックなバイクに乗ってますね、これ一台目?」
『そうですけど、マニアックですか?』
「Gios自体はそこそこ知名度のあるメーカーですが、今クロモリってのは珍しいですね.
クラシカルな感じというか…おー、ヘッドパーツも変わってるしRDにデュラ入ってる.」『RDは壊れちゃって修理頼んだら在庫あるのこれしかなくて、じゃあそれでって.』
「支払の時びっくりしなかったwww?」
『しましたwwwww』
なんてお話しながらローラー台に実車をセット、先ずはサドルの高さの調整からです.
間接にシールでマーキングをし実際にペダルを漕いで、下死点通過時の膝の角度を見ながら微調整を加えていきます.
僕の場合は股関節の柔軟性に左右で差があり(右がだいぶ固い)下死点通過時の角度も大きく違っていて、
その辺が左膝に痛みが出てきた要因の可能性があるとの事.
最初は難航したんだけれど、後述する後退幅を出した後再調整したら良いポジションが見つかり一安心.
続いてサドルの後退幅.
同じくペダルを漕いで、今度は水平時に膝関節の中心がペダルシャフトの真上に来るようサドルを後退.
自分でも同じような位置にセッティングしたつもりだったんだけど、
やっぱり斜めからの視点じゃうまくできてなかった様でサドルが3.5cmも後ろに下がった.
最初はこんなに下げて大丈夫かなーハンドル届くかなーと思ったんだけど、これが全然平気なの.
レールの調整幅にかなりの余裕があったため、ベストなポジションまで下げられたのも良かったみたい.
最後はクリートのフィッティング.
人間の脚は多かれ少なかれ傾きがあり、ペダリングの際に膝を内側に捻るような動きになっている.
そこでシューズ側にシムを挟む事で膝の軌道を真っ直ぐに補正し負担を減らそう、というのがクリートフィットの目的.
ここで活躍するのがこちらのレーザー水平機.
レーザーの墨出しとマーキングを見比べズレを補正していく…んだけどこれが本当に凄い.
「ピントが合う」という表現が正しいかどうかわからないんだけど、
今まで普通だと思ってたのに調整をしてもらう度に脚が回りやすくなってどんどん曇りが晴れていく感じ.
これが補正後のペダリング画像なんだけれど本当に膝の軌道が真っ直ぐ. 数ミリの調整でここまで変わるとは…と、プロフィッティングの効果に驚きを禁じ得ません. 自力では不可能な調整なので、本当に受けて良かったと思ってます.
下半身については数字でかなり厳密に追い込めるようでミリ単位の修正を何度も行って頂いたおかげか、 クリートの調整を終えた段階で左足のポジションはほぼ完璧. 右足も現時点で十分許容範囲内なんだけれどハムの柔軟性を上げていくとなお良くなるよ、との事. ストレッチの仕方もしっかり教わったので、これは毎晩実践せねば.
3.感性頼りでプロも泥沼?上半身のフィッティング
詳しい調整をする前に、STIの角度が悪いという事で先ずはここを修正. はじめに組んだ際ブラケットとハンドル上面が水平になるよう適当につけたんだけど、どうやらこれがかなりの悪手だったようで、 角度がマイナスのため手首に負荷がかかり、位置も遠く腕が伸びきって上体が使えてなかったらしい.
そんなわけでブラケットの角度を変えてもらったんだけど、もうこの時点で乗り易さが激変. とにかくハンドルが握りやすく、上半身も無理なく曲げられる. 逆にちょっと近い気がしたので調整していったらハンドルがどんどん下がっていって、 最終的な落差はなんと8cm超にもなっちゃった. それでも苦しい感じは全くせず、下ハンも問題なく掴める.
フィッティング用の可変ステムを取り付け、さらに細部の微調整…なんだけど、 上半身に関しては下半身の様に数字で厳密に追い込んでいくという感じではなく、 可変ステムで様々なポジションを体験しその中で自分に合ったものを選ぶという感じ. ブラケットと下ハン握ってみて脇の角度が許容範囲、見た目窮屈に見えなければ大体オッケーらしい.
『ハンドル幅とか形状とかはこれで良いんですかね?』
「あー、その辺りは感性ですね.」
『感性?』
「ハンドル周りはプロでも好き好きで、小柄だけれど幅広のハンドルを好む選手もいれば
大柄だけど力が入れ易いと380mmのハンドル使う人もいるしこの辺りは泥沼ですね.」『と、なるといろいろ試すしかないと』
「ですねー、プロでも気にする奴はしょっちゅうハンドルいじってますよ.
現状のまま乗ってみて、下ハン遠いとか具体的な要望が出てきてから悩むんで良いと思いますよ.」
さり気なく泥沼にはまる前に救って貰えたので取り敢えずハンドルは気にしない事にする. 後は可変ステムで出したポジションを実際に再現して完了. 既存の105mmステムだと若干ハンドルが遠くなるんだけれど、 高さは合ってるのでこのまま乗ってみて遠く感じる様なら100mmステムに変えてみては、 という事で追加パーツは無し.
4.プロから貧脚認定? ペダリング解析
フィッティングはここで終了、最後はペダリング解析.
GTローラーFLEXというローラー台に設置されたバイクを同じポジションにセッティングし、 パイオニアのパワーモニターを見ながら自分のペダリングの癖や欠点を教えてもらいます.
さり気に初エルゴパワーでギアチェンジの仕方が分からなくて焦ったものの、 機材の調整が良いせいかシフトが軽くフィーリングも独特な良さがあり、 カンパに拘る人の気持ちがちょっとわかった気もします.
ペダルを漕ぐとこんなグラフでどの方向にどれだけ力がかかってるのかリアルタイムで見る事ができます. パワーだけでなく左右のバランスやペダリング効率も一目瞭然、科学の進歩ってすげー.
因みに僕の場合はだいたい出力が150W、左右バランスは均等、ペダリング効率は60%前後. ただこうした数字を見ても比べるものがなくあまりぴんとこないので、実際これがどんなもんか聞いてみましょう.
『これってぶちゃけどんなもんなんですかね』
「正直効率はかなり良いです.」
『えっそうなんですか』
「3時の時点で垂直に踏めてるのが良いですね.
ただ6時の時点で真下に踏んじゃってるのでこれだと推進力になってないんですよ. ここを真横にスライドするイメージで、矢印が円の接線になるようスライドした足をそのまま引き上げてくると…」『おー、67%にあがった』
「うん、上手ですね.」
『あれ、でも効率は良いけどパワーがあんまり出てないって事はつまり…』
「…」
効率良いけど着いて行けてないって要は貧脚って事じゃないですかやだー.
まさかの貧脚認定に落ち込みつつも、体重軽くて効率良いと登りは楽になりますよという言葉に励まされ、 よしこれからはヒルクラに専念するわと決意を新たn
「まあ筋力あって効率良いライダーが出てきたら終わりなんですけどね」
ですよね...orz
そんなこんなで引き足のトレーニング方法やダンシングのコツなどを30分位レクチャーしてもらい全行程終了.
5.フィッティングを終えて
結論から言うとハイパー受けて良かったです.
特に良かった点は
- 膝の痛みが出なくなった
- とにかく体勢が楽
- 脚が回しやすくなって乗ってて楽しい
他にも平均ケイデンスが上がったとかローラーでもがいたら70km出たとか 速度面でのメリットもありますがそれはあくまで副次的なもの、 とにかく痛みがなくなり、より乗ってて楽に、楽しくなったというのが本当に大きいです.
今回お願いしたのは【バイクフィッティング+ペダリング解析】で、 要した時間は4時間強、かかった費用は¥23,000+3,000(クリートシム代)=26,000となりました. 値段だけ見れば決して安くはないですが得られた結果は価格以上、 むしろなんでもっと早く受けなかったんだろうと思わせるに十分なものでした.
夏に大きなイベントが控えてるので、ここでポジションを固められたのは本当に良かったと思います. さあ、あとはひたすら乗って鍛えるぞー.